過去の結果から、未来会計まで
株式会社日設の主な営業種目としては、建物の内部に快適な空気環境を提供する「空気調和設備」や、生活するために必要な基本環境を提供する「給排水衛生設備」、建物内での人命や財産を守る「防災設備」の他、省エネルギーベースのライフサイクルコストを考慮して建物を維持するための動力や、良質な室内環境を創造する照明設備などの「電気設備」、高度情報化社会における社内LANの構築や通信機器に関する「電気通信設備」などを行っている。
同社は、建築業界全体の冷え込みの中、品質と安全、コスト競争といった矛盾する問題を解決すべく、システム全体の見直しを図り、攻めの経営に転じた。
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株式会社 日設
取締役 経理部長
永井 喜則氏 |
「現在の日本全体を見渡すと、高齢化社会の進行、高度経済社会の進展、地球環境保護への認識の高まり、経済活性化のためのグローバル標準など国際化への対応、規制緩和に伴う競争の激化など、様々な変化が見受けられます。これは、建築業界にとっても重要なテーマとなっています。弊社では、このような激動の時代だからこそ『VISION
21』を策定し、さらなる発展とその実現に向けて、各種の経営改善施策に取り組んでいます。」(取締役・経理部長
永井喜則氏)
同社では、企業コンセプトとして(1)テクノロジー、(2)クオリティ、(3)エコロジー、(4)セーフティを掲げ、これらのコンセプトを実施することによって、ユーザーの快適空間と一人ひとりの幸せの実現を目指している。
まず(1)テクノロジーでは、情報化社会を支える大規模インテリジェントビルをはじめ、NTTビルや郵便局、学校、病院といった公共性の高い建物の設備工事のみならず、マンション、社宅といった民間の設備工事にもトライし、あらゆるニーズや用途に対応できる豊富な経験と技術を蓄積した。
(2)クオリティについては、多くのユーザーの信頼を獲得しつつ高品質な設備を提供するため、管工事及び電気工事施工管理技師といった国家資格を有する技術者を多数採用し、責任ある施行体制を確立している。また、品質保証のグローバルスタンダードISO9001の認証を本社で取得し、各事業所への拡大を進めている。
(3)エコロジーでは、地球環境の保全のため、省エネルギーをテーマとした工事施工を積極的に行っている。
(4)セーフティでは、人身やお客様の大切な財産の安全を重視した活動を行っている。実際、同社では創立以来「重大事故0(ゼロ)」という記録を継続している。ここからも、安全性に対する姿勢がうかがえる。
仕事に携わる一人ひとりが企業のビジョン、コンセプトを体現しているからこそ、重大事故もなく、ユーザーにとっても地球にとっても最適な建築設備を提供することができるのだ。
会計システムと連携したWICS始動
同社では、経営改善施策を積極的に行って顧客満足度を向上し、常に新しいニーズを開拓している。その背景としてあるのが(1)企業コンセプト、(2)企業理念、(3)行動原則、(4)長期目標の4つからなる「VISION
21」である。業務改善などの短期目標、福利厚生の充実といった中期目標、また株式上場といった長期目標を設定し、社員自らの手でグッドカンパニーを目指す体制を整えた。こうした社内体制こそが、踏み込んだ経営改革を可能にしているのだ。
同社では、会計システムと「契約情報」「工事情報」「実行予算の作成」「購買依頼書作成」「注文書作成」「請求書確認」「支払い処理」、更には「勤怠システム」までを連携させ、各部門との連携をスムーズにすると同時に、未来会計まで視野に入れたシステムWICSを構築した。
「従来からも、会計システムと各種関連システムを連携させた“NICS(Nissetsu
Information Control System)”というシステムを稼動していました。しかし、完全バッチ処理によるシステムだったため、入力されたデータは既に“過去”の結果となっており、現状はどうなっているのか、“未来”の会計はどうなっているのかといった情報は一切わからないままでした。」(永井氏)
従来システムの場合、業務システムはそれぞれ単独で動作し、戦略を立てるための「情報」として十分に生かしきれていなかったという反省があった。品質・安全を犠牲にすることなくコストダウンするためには、まず戦略を立て、攻めに転じる他はないと同社は判断した。
そのために必要な情報は、「現状の把握」と「未来の予測」だ。ビジネスの状態をリアルタイムで把握できれば、今後の戦略を立てる事ができる。そのために各業務システムと会計システムを連携させ、リアルタイムの現状把握を可能にするWICS導入が決定された。
「NICSは、全国の拠点ごとにサーバーとシステム管理者を置き、月ごとにバッチ処理で結果だけを本社に送付していました。WICSでは、拠点に設置してあったサーバー/システム管理者を撤廃し、本社のサーバーに機能を集中させ、拠点にはクライアントのみの設置としました。サーバーの集約を行うことで情報の一括管理が行えるようになり、クライアントからリアルタイムに情報をやり取りできるようになったなど、現状と未来の可視化が実現しました。これによって、日々蓄積されている情報を戦略的に活用できるようになりました。」(永井氏)
WICSの完成により、拠点に配置していた管理者も不要となり、人的リソースの効率化も実現した。また、サーバーを統合したことで、管理・運用性も向上している。
同社では、拠点-本社間のインフラとして、光ファイバやADSLなどのブロードバンドを活用した。高速な接続環境を実現することによって、大量のデータも難なく扱えるようになったメリットは高い。
日設では、新たにインフラも変更し、すべての従業員が、場所、時間、距離に関係なく、直接現状データを入力できるようにすることで、リアルタイム性の実現にほぼ成功した。

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| WICS概要 |
驚くべき開発生産性に加え、データベースとの連携も容易
WICSでは、各業務システムをeDeveloperで開発している。eDeveloperは、クライアント-サーバー、第2世代Webアプリケーション、第3世代Webアプリケーション、リッチクライアントといったユーザーインターフェースを持つアプリケーションを構築可能で、インタラクティブなリッチインターフェースをWeb上で実現できる。また、4種類のインターフェースをTPOに併せて使い分けることができるという特長もある。さらに、独自のMagicエンジンにより、開発生産性やメンテナンス性が非常に高いという特長もある。
「会計システムと密に連携する各業務システムは、すべてeDeveloperを使って開発しています。会計ソフトなどでフルカスタマイズすることも可能でしょうけれど、eDeveloperで開発すると小回りが利きますし、使い勝手もいいシステムが構築できます。また、導入期間の問題もあります。マジックは開発生産性が高いため、驚くほどの短期間でシステムを構築できました。実際、構想から1年程度でシステムとして運用することができたのですから、本当に驚きました。さらにシステム開発も、弊社の事業内容を熟知している1~2名のシステムエンジニアが行っています。今後、状況に合わせたシステムを追加していくことで、成長するシステムとして利用できると期待しています。」(永井氏)
WICSの基幹となる会計システムには、パッケージソフトを採用し、会計システムには大きく手を入れることなく、周辺システムを構築することで業務内容に合った柔軟なシステム作りを行っている。中心となるシステムに信頼性の高いパッケージソフトを採用することで、導入期間の短縮を図る狙いもあった。また、周辺の業務システムをeDeveloperで開発することで、両者のメリットを生かしたシステム運用が実現した。
「会計システムは、大きく変更する必要がないと考えました。パッケージソフトであれば、ある程度想定された使い方である限り、誰でもすぐに使えるだろうという考えもありました。会計ソフトを弊社にあわせてフルカスタマイズすると、コストと導入までの期間が跳ね上がります。そのため、パッケージソフトとeDeveloperでのシステム構築を決めました。実際にやってみると、むしろパッケージ製品である会計ソフトの方に時間がかかってしまいました。システムの指示などの作り込みが、思った以上に大変でした。eDeveloperの生産性の高さを改めて感じました。」(永井氏)
実際、eDeveloperの生産性の高さは定評がある。さらにeDeveloperの柔軟性も注目されている。今回、会計システムの改変に伴って、データベースはDB2を採用した。eDeveloperは、Pervasive、Oracle、MS-SQLなど、多くのデータベースに対応する。株式会社日設の例は、eDeveloperの生産性・メンテナンス性の高さが発揮された好例と言えよう。
「今回データベースにはDB2を利用していますが、このデータベースの取り扱いについてもeDeveloperだとうまくいきます。データベースの変更をするとシステム全体が作り直しに近い状態になるケースもありますが、eDeveloperの場合はまったく気にしなくて済みますし、業務システムとの連携も容易で、メンテナンス性の高さにも驚くばかりです。」(永井氏)
会社全体のベクトルを一致させるシステムが完成
WICS構築では、ユーザーの利便性にも気を配っているという。一度入力したデータは、可能な限り再利用し、入力の手間やミスを極力減らしている。
「システムに重要なのは、使い勝手の部分です。使いにくいシステムだったり面倒なシステムだったりすると、とたんに使われなくなります。現在はIT化が進み、ビジネスでメールを使うといったことも当たり前となっています。その感覚で業務システムを使ってもらえるよう配慮しています。」(永井氏)
品質・安全の向上とコスト削減という難しい課題を突きつけられている中で、株式会社日設の出した答えは、全社員が時間と距離、場所にこだわることなくリアルタイムに状況をインプットし、経営陣はリアルタイムで会社の現状から未来会計まで把握し攻めの経営を行うというスタイルだ。このスタイルを徹底すれば、状況を見極めつつ早い段階からの判断と、事業の効率化を図ることが可能となる。
「会計データは、常に“結果”が出てくる。“過去”のデータで何かしようにも、未来に対しては手の打ちようがない。常に状況と現状を照らし合わせながら最適な戦略を立て、経営するのが最良の方法だと思います。建築業界は、さらなる効率化とスピードが求められています。WICSによりお客様のニーズにも今まで以上に応えることができると期待しています。個人的には、システムで重要なのは“思想”だと考えています。その場の対処でシステムを構築していくと、最後には辻褄が合わなくなってしまう。会社全体を見ながらシステムを構築していくことが重要です。システムの構築に際して会社全体を見るため、不思議と人の行動までが分かってくる。システムの変更は、会社の構造を改革するのとイコールだと考えています。だからこそ、全社員のベクトルを一致させるシステムが必要になります。この思いを込めて、“WICS”には“We(我々)”の頭文字を入れました。eDeveloperの生産性、メンテナンス性の高さにより、いいシステムが構築できたと自負しています。」(永井氏)

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| WICSネットワーク構成 |
成長を続けるシステム、今後の取り組み
「利用され続ける限り、システムは常に成長するものだ。」とする永井氏のことば通り、今後もWICSは進化と拡張を続けてゆくことが期待されている。そして、現在最も待ち望まれているのが、出先からのリアルタイムアクセスだ。WICS構築により、リアルタイム性の実現にほぼ成功したことは既に述べたが、モバイル環境にだけまだ課題が残っている。
「モバイル以外では、時間、場所、距離の超越が可能になりました。クライアントとサーバー間のセキュリティを重視しVPNによる接続にしたため、セキュアでリアルタイムな環境も整いました。これで拠点と本社の間ではリアルタイムを実現できたと思います。今後の課題として“現場”が残っています。モバイルでの接続を考えると、現状のインフラは実用レベルではありません。この部分については将来の技術革新に期待しています。」(永井氏)
WICSが、モバイル環境からのリアルタイムデータを取り込み、更に進化した姿で稼動する日が待ち遠しい。 |